種苗法改正案、心配でちと調べてみた

コメの種(籾)

先ごろ、種苗法改正案見送りの報道があった。この法案どうなのよ?と思ってはいたが、その内容をきちんと把握してなかったのでメモします。
まずはちょっと思い違いをしていた部分から。

自家増殖は一律禁止ではない。

自家増殖原則禁止は登録品種のみで、その数約8000種。原則禁止というのは許諾料を払えば自家増殖もできるからだ。が、しかし、県や自治体で開発してきた高級ブランドが民間に払い下げられたら、許諾料が高額に釣り上がるのは目に見えているが。
登録品種は開発に時間と金がかかった高級ブランドが多いと思われる。その割合は今のところ全作物の10%くらいで、残り90%は一般品種だ。一般品種は自由に自家増殖できる。

・一般品種とは、在来種、登録されたことがない品種、品種登録期間が切れた品種のこと。
・コメで言えば、コシヒカリ、あきたこまち、ササニシキなどは一般品種。最近出てきたゆめぴりか、つや姫、ななつぼしなどは登録品種。

登録されてなかった品種が登録され、許諾料を払わねばならなくなるのでは?

一般品種を新たに登録することはできない。仮に一般品種と知りながら品種登録した場合には、種苗法第68条(詐欺の行為の罪)により罰せられる可能性がある。←可能性だけ?もっと積極的に農家を守らないの?

一方、改正案では登録品種の自家増殖で違反した場合は、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金(農業生産法人は3億円以下の罰金)が課される。←上に比べたら育成者権にずいぶん有利だな。さらに民事で賠償請求されるし?

なんのために改正するのか。

登録品種になっている「シャインマスカット」や「とちおとめ」が中国や韓国に持ち出され、さらに第三国に輸出・産地化される事例が出ている。(さくらんぼや神戸牛などもね。)これでは農業の国際競争に勝てない。新品種開発には10年超かかっているのに、それが簡単に盗まれている現状があり、日本のブランド農作物の国外流出を防ぐため政府が提案した。

・シャインマスカット農家の嘆き

山田正彦氏インタビュー(ハーバー・ビジネス・オンライン)https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200522-00017983-jprime-ent&p=2からyahoo!コメント一部引用

「実家が(シャインマスカットの)果樹園をやっています。私も親も、今回の件(改正案見送り)は非常に残念だと感じます。反対してる方は、農業の現状を知っているのでしょうか。日本ではブランド果実をつくり、海外の安い果実に対抗してます。(中略)
しかし、他の果実と同様に、お隣の二国に苗木を持ってかれてしまいました。そうなると、海外のからの輸入&質の低下→値段暴落→ブランド力低下、になっていきます。
親は「あと、数年で安い外国産が入ってくる」と肩を落としていました。地元は新しい品種を作っていて数年後に出荷されますがこのままでは、今までと同じになってしまいます。日本の農家を守るために、早く可決される事を願います」

・『現代農業』編集部の山下氏(農山漁村文化協会)の見解

柴咲コウにかこつけて、なんとか種苗法改正を紹介しようとしている記事https://www.jprime.jp/articles/-/17983から一部引用

ほとんどの農家はこの法改正については反対しています」としながらも(中略)
「農家の自家増殖を禁止したところで流出は止まらないですね。『シャインマスカット』を例にすると、枝一本を切り取って海外に持ち運んで、現地のブドウにくっつけてしまえば、簡単に無限増殖させることができるわけです。つまり、悪意をもって流出させようとする人がいる限り、絶対に防ぎようがない。“海外で品種登録をする”という方法をとるのが最善なのではないでしょうか

シャインマスカット

悪名高き多国籍企業に種苗の囲い込みに悪用されないか?

ここです、心配なのは。種苗法改正に反対する理由は、個人的にはこれに尽きる。10年ほど前、2008年フランスで製作されたドキュメンタリー映画『モンサントの不自然な食べもの』を見ていたからだ。

モンサント社のタネで栽培した隣の農地から、勝手に花粉が飛んできて勝手に交雑しただけでも「知的所有権違反」で農家を訴え、多額の賠償金を請求し、農家をがんじがらめにしていく悪魔のやり方には背筋がゾッとした。まさしく”農奴”に仕立て上げていくのだ。「企業の農奴」に。

この映画の反響は大きく、世界42カ国で上映され、市民運動のきっかけともなった。モンサント社はその後、除草剤ラウンドアップの健康被害の裁判で負け、多額の賠償金を背負ってドイツのバイエル社に身売りした。2018年バイエル社の買収は完了し、徐々に製品からモンサントの名を消しつつあるが、この改正法案は第二のモンサントが起こり得る、つけいるスキを与えるのではないかと危惧している。

冒頭で一般品種を新たに登録することはできないと書いたが、在来種にほんの少しの改良を加えて、登録品種にすることはできる。事実、年間800種類もの作物が従来のものとは異なる新しい品種として登録されているそうだ。それだけ簡単に登録できるということか。
そのスキをついて、在来種を栽培している農家に「それはうちの登録品種にそっくりですね。うちのなんじゃないですか?なんなら訴訟を起こしてもいんですよ。」と、タネの囲い込みを始める。そんな第二のモンサタン(悪魔のモンサント)が起こったら、今の日本の小さな農家じゃ太刀打ちできない。ただでさえ低い日本の自給率に就農率は崩壊だ。

種苗を独占していく手段として悪用される可能性は十分にある。が、今のままでは海外流出し放題でもある。どうしたらいいのか素人の私にはわからない。でも問題意識は持ち続けていきたい。

●参考:
農林水産省「種苗法の一部を改正する法律案について」
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/shubyoho.html
『モンサントの不自然な食べもの』解説
https://www.uplink.co.jp/monsanto/commentary.php
『モンサントの不自然な食べもの』予告編

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