海の見える格安物件、必然の出会い【4】

今日がエイプリルフールだからって、これは嘘じゃないですよ。
実話です。
っつーか、メモと銘打って、その実ノンフィクション小説みたいになってる(笑)。だって書き始めたらこうなってしまったんだもーん♪ では続き再開。

・・・
「まさかあの場所から海が見えるとは思わなかったけど、見えるんだよ。崖の上と言うと聞こえ悪いけど、ちょい高い山の上で、そこから海が見えるんだよね。こっちで海が見えるロケーションというのは希少だよ、人気高いんだよ。この間来ていろいろ見て実感したでしょ? しかも2区画で120坪あるんだ。」

弟の声が弾んでいる。
海が見えて120坪・・・120坪〜〜?
都会っ子の私からすると信じられない広さだ。

「その不動産屋も、今日鍵を受け取ったばっかりというホヤホヤの物件でさ、ついでに中も見せてもらった。室内も悪くなかった。あれならリフォームで行けると思・・」
と、まだ話が終わらないうちに、私の中でなにかがスパークした。

「それ!買う!!いくら?」
「え・・・。300万。」
「手付け打つわ。10万でいいの?」
「いや、こっちはこのくらいの値段じゃ手付けなんか打たないよ、口約束。」
「わかった。とにかくGO BACK!その不動産屋さんに戻って!走れ、走るんだ、走れメロス!」
「・・・・・・。あのなあ。オーケー、買うんだね?」
「うん!!」

わずか1分の決断だった。一旦、電話は切れた。まだ場所も聞いてなかった。見てもいない、住所も知らない、それでもリフォーム屋として何十軒と見てきた弟のあの弾んだ声、今まで積んだ経験、自分の直感。
これは必然の出会いだと神が降りて来た。
事実、そこで即決しなければ人手に渡っていた。

弟の話ではこうだ。不動産屋に戻ってみると、リフォーム業者の相見積を取るための電話をしてるところだった。あと30分遅かったら、前から依頼のあった購入希望者に電話をかけているところだったそうだ。ほんとうは内見を希望していた先客がいたのに、たまたま鍵を受け取った時に弟が別件を見せてほしいと訪れた。あまりのグッドタイミングに、弟に先に内見させたという偶然だった。いえ、偶然ではなく必然の出会いだったのですね。(by国分くんオーラの泉)

そうして翌日には300万握りしめて茨城に向かっていた。
派遣を辞めたばかりで、平日でも動けるという失業者の特権をフルに活かして、翌日すぐに契約に向かった。先客の手前もあるし、これはもうさっさと契約してしまった方がいいだろうと、姉弟二人の判断だった。

「司法書士はどうするの?」
「こっちじゃ一々、このくらいで頼まないよ。大根買うような感覚なんだよね。お買い得だよ奥さん、あらそう?じゃ、ひとついただくわ、でもちょっと負けてくれる?みたいな。」
「絶句。ありえん。大根じゃないよ、土地だぞ。」
「うん、でもほんとにそうなんだ。とりあえずちょっと値切れるかは聞いてみるよ。でもあんまりグチャグチャ言ってると、じゃあいいや他所に売るわみたいになるけどね。とりあえず印鑑と現金だけ持って来てよ。」

信じられん!弟はああ言ったが、これでも買って売ってを2軒やって、計4回取引の経験がある。その4回とも、そんな簡単ではなかった。まあ、いずれも東京の不動産会社での取引で、ローンを組んでの話だが。とりあえず自主的に印鑑証明と住民票を取りに行き、それも携えて高速バスに乗った。

利根川を渡ると住友金属を始め、大きな鹿島臨海工業地帯が見えてくる。何本もの煙突が建ち並び煙を吐いている。ああ、そうか。こっちには働き場所があるんだな。そして今度はとてつもなく大きい湖、北浦を渡る。開墾せずとも古代からそこにある広大な平野に、豊潤な水を湛える霞ヶ浦に北浦。水には困らない。稲作で水に困らない農業の盛んな土地、豊かな土地なのだ。豊かな土地はおおらかな気風を作る。趣味で里山保全の田んぼに参加してることもあり、そこに気がついた。まるで関東に下野した時の徳川家康のような気分(笑)。
秀吉に言われ、憤懣遣る方ない思いで関東の地に降り立ったろう。まずは台地を探しそこから遠くへ目をやる。するとそこには思いがけない平野が広がっていたのだ。気持ちは高揚して、あらん限り目を見開き、その光景に誓うのだ。必ずやこの土地が将来の繁栄を約束する。
なんか、そんな気分がふっと湧き上がった。←妄想好きw

豊かっていいなあ。おおらかっていいなあ。ほっこりする。
おまけに値切りが効いて、ちょっと安くしてもらって、海が見えるその土地は私のものになった。

・・・この章おしまい

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